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「・・・・」
エドワードはメイドたちにプレゼントだと渡された夜着を前に固まっていた。
これでアルフォンス様を悩殺してくださいまし!そう言って渡されたものだったのだが。
「のうさつ・・・」
包みを開けると、それは妙にひらひらして、ピラピラして、なんだか。
「透けてる」
重なっている時はよく判らなかったが、恐らく肩が入るのだろうと思われる部分を持ち上げてみるとでろりと床に流れたその夜着は確かに透けていた。
メイドたちは当然エドワードが男であることを知らない。女が着れば恐らく悩殺なのだろうとは思ってみるが、エドワードが着て悩殺できるものかどうかも判らない。
今日は大切な姫様とアルフォンス様の初めての夜なのですから!と、きゃーというピンク色の声を思い出してエドワードは首を傾けた。
そうだ。普通の女だったらこれを着ればアルフォンスを悩殺出来るのに違いない。そうするとアルフォンスがはりきってきっと子供もたくさん出来るのだろう。
だが残念ながらエドワードに子供は出来ない。そう思うとエドワードは申し訳なくなってしまった。メイドたちはきっと子供を楽しみにしてくれているのだろう。当たり前だその子供は大事な世継ぎになるのだから。もしエドワードが女だとしても、アルフォンスとは血がつながっているのだから、子供を作ることはできないけれど。
とそこまで考えて、いや女だったらアルと結婚することもなかったのかと思い返す。
アルと結婚できたのは、ひとえにエドワードが人には言えない(男だと言う)秘密があったからだ。
この間着たウエディングドレスよりひらひらだなと思いながら、エドワードは妙に悲しくなってしまった。
メイドたちが大切だと言ってくれるのに。こんなものまでわざわざ用意して。
「よし」
エドワードは決意した。
みんなの期待を裏切るわけにはいかない。子供はともかくアルフォンスは悩殺しなければならない。
エドワードはひらひらを被った。
「おお」
なんというか中途半端に透けている。紗に透けて、はたしてこれで悩殺出来るのかは判らないが。
「これパンツ履いたら微妙だよな」
悩殺のひらひらには、悩殺のひらひらパンツだろう。よく判らないがエドワードはそういうのは持っていない。
「にいさーん。ずいぶん長いけどだいじょうぶ?」
「おう!もう出るぞ!」
「そう」
安心したような息が聞こえて、よし迷うのは男らしくない!とエドワードはそのまま出ることにした。
「遅くなって悪ぃな!」
「ちょっと兄さんここって夜見ると凄いんだね、ぜんぜ・・・・・」
この館の庭にはしかけがあって、夜になるとライティングが植木で絵を描いたように見えるのだ。
「おお、そうだろ」
エドワードも外を見ようとアルフォンスの横に並びかけた。が。
アルフォンスがすごい勢いで飛びのいた。
続く!(まじで)
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