**********************************
何やら呆然とした態のアルフォンスは、よろりとエドワードを見た。
勢いで脱いでしまったが確かに寒い。
「寒いから早く寄越せ」
アルフォンスが持ってきた真紅のガウンは肌触りが良くてエドワードのお気に入りだ。
それをひっかけると、今までしていた、高いヒールを無理やり履いてみた時のような心もとなさが消えた。
「えーと・・・?」
「やっぱり似合わないもんは着るもんじゃねえな」
脱いだピンク色の夜着を持ち上げると、それは相変わらずふわふわで、さらさらで、ぴらぴらで。
きっと女の子なら、アルフォンスを悩殺できたのだろうが、残念ながらエドワードではそうもいかなかったようだ。
「ごめんな」
アルフォンスはガウンを手にしていた時の格好のまま固まっていたが、かくりと首をかしげた。
「どうして」
「何?」
「どうして脱いで・・・」
エドワードは手近なソファに座って答えた。メイドたちには申し訳ないが、夜着はそこに置いてしまった。
「だって似合わないだろ」
「・・・・」
「妙なもん見せて悪かったな。お前、優しいから似合わないなんて言えなかったんだろ」
「違うよ!」
突然アルフォンスが激昂した。
「ボクは!」
エドワードはびくりとして、アルフォンスを見上げる。
「ボクは、あなたを見られなかっただけだ」
「え・・・だから、見苦しかったってことだろ」
「ボクはあなたを好きなんだよ」
真剣なまなざしを向けられて、エドワードの鼓動が跳ね上がる。好きだと。あの日言われた記憶が蘇る。
「う・・・ん」
「好きな人の、あんな姿見て、動揺しない訳無いと思わない?」
その場に立ち尽くしていたアルフォンスが動いた。エドワードは竦んだようになって、その意味を考えた。
「でも、オレ男だし」
「じゃあどうしてアレ、着たの」
「だって・・・オレ、男だから」
同じことしか言えないエドワードの心の中でぐるぐる同じ言葉が回る。動揺。動揺だって?
アルフォンスはゆっくりと近付いて、ソファの前で膝をついた。
「そう、あなたは男だ。そうでなければ、私はここにいなかったでしょうね」
手のひらが頬に当てられて、思わずエドワードは息を止めた。
PR